中学受験という選択

中学受験専門塾の現役講師が語る、中学受験の現実。

2017年入試を終えて

昨日、都立中高一貫校の合格発表があり、今年の受験生の合格発表が全て出揃った。

今年も悲喜交交の結果ではあったが、全体を通じて見れば、想定外の悲劇よりも想定外の奇跡が多かった。

ここで今年の受験を終えた今だからこそできる総括をしようと思う。

とは言え、どの中学校の傾向が変わっただとか、人気に陰りが出たとか、そういった内容は、各塾が手にした結果と主観を基に分析を行うのだろうからここでは割愛する。

 

その代わりに何を総括するのかというと、今年の入試を終えて”改めて”感じた法則めいたことを述べようと思う。

私が受験指導に携わって今年で20年目だ。(完全に離れていた時期が若干あるが。)

毎年多くの受験生の合否を見ているうちに、なんとなく”勘”が働くようになる。

この生徒は第一志望に受かりそうだ、とか、第一志望ではなくて、第二志望に進学しそうだ、とか。はたまた、今志望校として挙げていない学校を目指したほうが良さそうだ、とか。

今年も理屈で説明ができることからできないことまで織り交ぜた進路指導を展開した結果、割と満足してもらえる結果となったの思うので、まとめてみよう。

 

 

其ノ壱 東京・神奈川入試を受験する前に、千葉・埼玉入試を十分活用すべし。

 進路指導をする人によって意見が全く異なる、1月入試の扱い。私は昔から積極活用派だ。具体的には、埼玉入試が1/10から、千葉入試が1/20から始まるため、埼玉県内の中学から入試が始まることになる。

 特に埼玉県内の中学は男子と女子で受験パターンが大きく異なるが、基本的な考え方は、埼玉入試、千葉入試は最低限1つずつ以上は受験する。

  →6年生にとって、入試の緊張感というのは20日間も続かない。埼玉→千葉→東京・神奈川と進むことで程よく緊張を保ったまま最後の1ヶ月を過ごすことができる。また、東京神奈川入試と比べ、千葉埼玉入試は同一日程で入試を行う中学校が比較的少ないため、1校あたりの受験者が多い。本年の受験者数が多い学校を例に出すと、栄東中で5800名、市川中で2600名だ。東京・神奈川地区に住む受験生にとって、本番といえる2/1からの入試を前に、大人数の緊張感を体感しておくことは非常に重要だった。入試で大人数なのは受験生だけではない。我々塾講師もそれぞれの入試会場に大挙して集まり、自分の教え子たちが少しでも良いコンディションで受験に臨めるように朝早くから試験会場の入り口で受験生を待ち構えている。これら全てが緊張の原因となりうるのだ、大本命の入試が、子どもにとっての初受験にしないことが大切だ。

 また、1月入試では、入試の得点を開示してくれる学校も増えてきた。まさに模試として使えるのだ。

 1月校を複数受験するメリットはまだある。入試を受け、試験問題を持ち帰り、自宅で解き直し、合格発表にドキドキし、合格に喜び、不合格に悔しさを覚える、という体験をしておくべきなのだ。東京・神奈川入試は、2/1〜2/5まで連日行われる。1つの不合格にショックを受けそれを引きずっていては、後半戦は戦えない。”不合格になれる”ことも大切なのだ。これら全ての狙いを、1月入試はカバーできる。例えば下記のようなパターンだ。

 

 男子  1/10 栄東A 1/12 栄東東大Ⅰ 1/20 市川 1/21 東邦大東邦 1/25 立教新座

 女子  1/10 栄東A 1/12 栄東東大Ⅰ 1/13 淑徳与野 1/14 浦和明の星 1/20 市川 1/21 東邦大東邦

 

1月入試の中で、模試としての役割、場馴れとしての役割、合否を体験する役割、全てを兼ねることができる。今年の受験生も、1月頑張りきった生徒は2月入試の最後まで落ち着いて受験できていた。逆に、1月校を受験する意味を履き違えていた受験生は、2月に入り大変苦労したと思う。

 

 

其ノ二 日頃の行いはやはり大切

 今年の受験結果を振り返ってみたときに、最後の最後で”何故か”日頃素直に努力していた生徒と、そうでなかった生徒で差が出た。

 努力するAくんと頑張れないBくんがいたとして、実力はBくんのほうが高いのに、同じ学校でAくんが合格、Bくんが補欠になる、といった具合だ。

 塾に通っていれば、様々な先生たちから様々なアドバイスをもらっているはずだが、それを素直に聴けるかどうか、が合否に影響していた、と思える。この”日頃の行い”は、受験生だけではなく、その親も含まれている。結局プロのアドバイスを軽視している受験生+親のもとには、なかなか本当に嬉しい合格は舞い込まない、ということなのだろう。

 この、日頃の行いが合否を決める、という説、非科学的であるが、塾教師で真っ向否定できる人はいないのではないか。

 

其の参 結局最後は、縁がモノを言う 

 今年の受験生に1月に話したことなのだが、「結局、縁のある学校には進学ができるものだ」ということだ。受験は、学力が高ければなんでも合格できるものではない。何故か自分の得意分野しか出題されない場合もあれば、苦手分野しか出題されない場合もある。学力だけではない、何か不思議な力が作用するものである。そんな様々な影響をくぐり抜けて合格を勝ち取ることができる生徒は、その学校に縁がある生徒である。多少学力が足りなくても、縁があれば合格し、その学校の制服を着ることができるはずだ。逆に言えば、不合格だったとして、自分の学力や努力を否定されたのではなく、縁がなかったのだと思って前を向くべきである。

 毎年、入試が終わってみれば、その子どもにとってベストな学校に進学したな、と思うことがほとんどである。

 

其の四 背伸びをした学習よりも、足元を固める学習

 これも毎年感じることだが、志望校と自分の学力の差が大きいとき、その受験生の行動は大きく2つに分けることができる。

 1つ目は、は目の前の課題を1つでも減らそうと、苦手な問題を一つ一つ学習していくケース。もちろん理想とする状態で受験を迎えることはできないが、失点の原因を少しでも減らし、合格に近づこうとする。

 2つ目は、現状の学習ではなく、志望校の過去問をとにかく解き、間違えた問題をとにかく直す、過去問のみに集中するケース。ただこの場合、直前になっても学力が足りていないにも関わらず、過去問にアタックすることになるので、当然過去問が解けない。解けないものを必死に解き直しをしたとして、それが身につく程度の基礎学力がなければ意味がない。割と惜しいレベルには届くことが多いが、逆転して合格できるケースは稀だ。また、「過去問を解きまくれば合格できる!」と言った都市伝説は、「過去問を解き始める前に必要な基礎学力があれば、あとは多少偏差値が足りなくても『過去問を解きまくることで合格できる!』」というのが正しい。

 

塾によっては、自社の合格実績確保に躍起になるあまり、目の前の生徒の人生を考えずに「A中学校を是非受けましょう!」等と言って志望校を変えさせることもある。が、私がいる某塾はその辺のんびりとしているため、最低限のお願い以上のことをしたことがない。できるだけ受験生やその保護者の希望に沿った受験をしてもらおう、と考えて毎年進路指導をしてきた私がやんわりと掴んだ、現時点での”合格校の法則“が、勘の招待なのだと思う。